合格率や勉強時間のデータを更新する仕事の副産物として、私は受験者の体験談を毎日大量に読んでいます。それで気づいたことがあるんです。試験の失敗談のうち、かなりの割合が「知識が足りなかった」以外の理由で起きている、ということに。
つまり、実力はあったのに当日の段取りで点を落とした話です。これがもう、試験の種類を問わず、びっくりするくらい同じパターンで繰り返されています。国家試験でも検定でも、出てくる失敗はほぼ同じ顔ぶれ。今日はその定番を並べてみます。どれも、知っているだけで防げるものばかりです。
会場にたどり着く、という最初の試験
いちばん多くて、いちばん致命的なのが会場間違いです。特に大学が会場の場合。「◯◯大学」とだけ頭に入れて出発して、駅に着いてから別キャンパスだったと気づくパターンです。大きな大学はキャンパスが市をまたいで複数あることが珍しくなく、間に合わなかったという体験談を、私は1つの試験だけで何件も読んだことがあります。読んでいるこちらの胃まで痛くなります。
受験票に書いてあるのは「◯◯大学」ではなく「◯◯大学△△キャンパス」のはずです。前日に受験票の住所を地図アプリへそのまま入力して、経路と所要時間を見ておく。これだけで、この最悪の失敗は確実に防げます。
受験票・写真・時計の三点セット
次に多いのが持ち物まわりです。受験票を忘れた、証明写真を貼り忘れた、写真のサイズが規定と違った。多くの試験には当日の仮受付のような救済がありますが、開始前の貴重な30分を手続きと動揺で使い果たすのは、点数には見えないだけでかなりの失点です。
そして意外な盲点が時計です。大学の教室や貸し会議室には、壁掛け時計がないことが普通にあります。あっても自分の席から見えないことがある。スマホは当然かばんの中なので、腕時計がないと残り時間がわからないまま解き続けることになります。「時計がなくて時間配分が崩れた」は体験談の定番中の定番です。通信機能のないシンプルな腕時計を1本、試験専用にしておくと安心です。
序盤の難問と、マークシートの行ズレ
試験中の失敗でいちばん多いのは、時間配分です。とくに、序盤に難しい問題が置かれていたときに、そこで意地になって何分も使ってしまうパターン。試験問題が易しい順に並んでいる保証はどこにもありません。わからない問題を数分で見切って次へ進む勇気があるかどうかで、後半にある「取れたはずの問題」を取れるかどうかが決まります。
もう1つが、マークシートの行ズレです。問題を1つ飛ばしたのに、マークは詰めて塗ってしまい、それ以降の解答が全部1行ずつずれていくやつ。気づいたのが終了10分前だった、という背筋の冷える体験談を何度も読みました。飛ばした問題には問題用紙に大きく印をつけて、マークのほうも必ず1行空ける。大問の切れ目ごとに、問題番号とマークの行が合っているか確かめる。地味ですが、これで防げます。
昼食後の眠気と、会場の温度
午前と午後にまたがる長丁場の試験では、昼食後の眠気がよく登場します。緊張が一段落した午後イチ、お腹いっぱいの状態で文章題を読んでいたら記憶が飛んでいた、という話は本当によくある。昼食を軽めにしておく、というのが昔からの定番対策で、実際これに尽きるようです。
それから会場の空調です。夏に冷房が効きすぎて寒い、冬に暖房で暑い、席がたまたま空調の真下だった。これは席を選べない以上、羽織れるものを1枚持っていくのがほぼ唯一の対策になります。宅地建物取引士のような受験者数の多い試験は会場も大教室になりがちで、席による温度差の話が毎年のように体験談に出てきます。実力と関係ないところで集中力を削られるのは、もったいないなんてものじゃありません。
前日の15分で拾える点数
ここまで並べてきた失敗、ぜんぶ共通点があります。前日に15分あれば防げる、ということです。受験票の住所を地図アプリに入れる。写真と持ち物を受験案内と突き合わせる。腕時計をかばんに入れる。羽織りものを1枚足す。どれも当日の朝にやろうとすると忘れるので、前日の夜にまとめてやってしまうのがコツです。
たいていの試験では、合格ラインの上下数点のところに大量の受験者がひしめいています。知識で数点を上積みするには何十時間もの勉強が要りますが、当日の段取りによる失点は、知ってさえいればタダで防げます。直前期の総仕上げと同じくらいの真剣さで、前日の15分を確保してみてください。数えきれない失敗談を読んできた私の、いちばん実用的な結論です。