元方安全衛生管理者の位置づけ
元方安全衛生管理者は、労働安全衛生法第15条の2に定められた役職です。同じ場所で元請と下請の作業員が一緒に働く現場では、作業が重なることで事故が起きやすくなります。法律はこうした現場の元請(特定元方事業者)に統括安全衛生責任者を置かせ、その指揮のもとで技術的な事項を管理する担当者として元方安全衛生管理者の選任を求めています。
条文では、統括安全衛生責任者を選任した事業者のうち「建設業その他政令で定める業種」に属する事業を行う者が選任義務を負います。統括安全衛生責任者そのものは建設業と造船業(施行令第7条第1項)で必要になりますが、元方安全衛生管理者の条文が名指ししているのは建設業です。造船所の元請がこの役職を置く必要があるかどうかは、所轄の労働基準監督署で確認してください。
この役職は試験に合格して取る免許ではありません。会社が要件を満たす社員を選び、現場の体制に組み込む仕組みです。そのため受験料や試験日はなく、本人が個人で「取得」するものでもありません。
選任が必要になる現場の規模
統括安全衛生責任者を置く必要があるかどうかは、同じ場所で作業する人数で決まります。施行令第7条第2項によると、ずい道等の建設、一定の狭い場所での橋梁の建設、圧気工法による作業では常時30人以上、それ以外の仕事では常時50人以上が基準です。2026年10月1日時点の条文では、人数には元請や下請の労働者だけでなく、労働者以外の作業従事者も含めて数える書き方になっています。
この人数に達する建設現場で統括安全衛生責任者を置いた元請は、あわせて元方安全衛生管理者を選任します。選任義務の有無は人数と工事の種類で変わるため、着工前の段階で両方を確認しておく必要があります。
選任できる人の要件
労働安全衛生規則第18条の4は、選任できる人を次のように定めています。
| 学歴 | 必要な実務経験 |
|---|---|
| 大学・高等専門学校の理科系統の正規課程を卒業 | 卒業後3年以上、建設工事の施工における安全衛生の実務 |
| 高等学校・中等教育学校の理科系統の正規学科を卒業 | 卒業後5年以上、同じ実務 |
| 上記以外 | 厚生労働大臣が定める者 |
規則第18条の3は、選任する人を「その事業場に専属の者」としています。ほかの現場との掛け持ちを前提にした配置はできません。また第18条の5により、事業者は元方安全衛生管理者に対し、関係請負人の作業従事者を含めた混在作業の災害防止に必要な措置をとれる権限を与えなければなりません。法第15条の2第2項は安全管理者の規定を準用しており、労働基準監督署長は必要に応じて増員や解任を命じることができます。
選任後の報告と担当する業務
元方安全衛生管理者が管理するのは、法第30条第1項各号の事項のうち技術的な部分です。法第30条第1項は、協議組織の設置と運営、作業間の連絡と調整、作業場所の巡視、関係請負人が行う安全衛生教育への指導と援助などを挙げています。
報告の手続は規則第664条にあります。特定元方事業者は、混在作業が始まった後、遅滞なく現場を管轄する労働基準監督署長に事業の種類や関係請負人の名称を報告します。元方安全衛生管理者を選任しなければならない現場では、その旨と氏名もこの報告に含めます。
選任を検討するときの確認手順
当サイトの提案:まず、その現場が施行令第7条第2項の人数基準(30人または50人)に達するかを工程ごとの最大人数で確認してください。次に、候補者の最終学歴が理科系統の正規課程に当たるかを卒業証明書で確かめ、卒業後に建設工事の安全衛生実務をした年数を職歴から数えます。学歴が理科系でない場合は「厚生労働大臣が定める者」に当たるかどうかを所轄の労働基準監督署に問い合わせるのが確実です。最後に、専属で配置できるか、混在作業の指示を出せる権限を社内文書で与えているかを点検し、第664条の報告書に氏名を記載してください。
参照資料と確認日
2026年10月4日確認。年度を記載した日程・手数料は、その年度の公式案内に基づきます。