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資格を「取ること」が目的になってきたら読む話

このサイトで合格率や勉強時間のデータを更新していると、副産物として受験者の体験談を読む量がとんでもないことになります。その中で何度も出会うパターンがあります。「合格発表を見た日の夜には、もう次の資格を探していた」というやつです。

笑い話のように書かれていることが多いのですが、私はこれ、けっこう真剣に考えたほうがいい現象だと思っています。白状すると、私自身に覚えがあるからです。合格の余韻を味わうより先に、「次、何を受けよう」が来てしまう。検索窓に次の試験名を打ち込んでいるときのあの妙な高揚感、知っている人にはわかると思います。

合格した日がいちばん気持ちいい、という仕組み

資格の勉強って、仕組みとしてよくできているんですよね。やることが決まっていて、進捗が目に見えて、最後に合否というはっきりした結果が出る。仕事や人生のほとんどのことが「やってもやらなくても変わらない気がする」もののなかで、資格の勉強だけは確実に手応えが返ってくる。

だから合格したときの気持ちよさは本物ですし、あれをもう一回味わいたくなるのも自然です。問題は、合格証書が届くころには達成感がだいたい薄れていて、手元に残るのが「で、これをどうするんだっけ」という宙ぶらりんな感じだということ。その空白を埋めるいちばん手軽な方法が、次の試験に申し込むことなんです。受験料を払えば、その日からまた「目標に向かっている自分」に戻れますから。

勉強が趣味なのは、まったく悪くない

先に言っておくと、資格の勉強そのものが楽しくて続けている人を、私はまったく否定しません。歴史系や教養系の検定を毎年の楽しみとして受けている人の体験談は読んでいてこちらまで楽しくなりますし、勉強という趣味はお金がそれほどかからず、年を取っても続けられる。趣味としてはかなり優良な部類だと思います。

資格マニアを自称して何十個も集めている人たちも、本人たちはたいてい自覚的です。これは趣味であって投資ではない、とわかったうえで楽しんでいる。趣味だと割り切れているなら、何個取ろうと誰の損にもなりません。

「不安だから次の資格」はコスパの悪い精神安定剤

引っかかるのは、楽しいからではなく、不安だから受け続けているケースです。将来が不安、今の会社にこのままいていいのか不安。その不安が、勉強している間だけはすっと消える。「努力している自分」でいられるからです。

気持ちは痛いほどわかります。ただ、精神安定剤として見ると、資格の勉強はかなりコスパが悪いんです。受験料と教材費で数万円、勉強時間で数十〜数百時間を払って、得られる安心は次の不安がやってくるまでのせいぜい数週間。しかも資格が増えるほど、「これだけ取ったのに、まだ何も変わっていない」という別の不安が大きくなっていきます。資格欄は埋まっていくのに状況が動かない焦り、というのは体験談でも定期的に見かけるもので、読んでいて胸が痛みます。

不安そのものは、資格では消えません。不安の元がお金なら家計の数字を、仕事への不満なら職務経歴そのものを直接見直すほうが役に立ちます。遠回りに見えて、そちらのほうがだいたい近道です。

3つ目の受験票を申し込む前に

そこで提案なのですが、もし今、3つ目か4つ目の資格に申し込もうとしているなら、その前に1つだけ確認してみてほしいんです。最初に取った資格を、何かに使いましたか。

ハードルは低くて構いません。履歴書に書いた、資格手当を申請した、その分野の仕事に手を挙げた。どれか1つでもやっていれば十分です。逆にどれもやっていないなら、新しい資格を1個足しても同じことが繰り返される可能性が高い。使われない鍵が2本に増えるだけです。

資格を増やすより、持っている資格の使い道を1個増やすほうが、たいてい早くて安く済みます。たとえば日商簿記検定を持っているなら、上の級に進む前に、今の級で経理の求人に1件応募してみる。使ってみると「次に何が足りないか」が具体的にわかるので、次の資格も自然と選びやすくなります。

それでもやっぱり次を受けたいときは、不安からではなく目的から選んでみてください。資格診断を使ってもらってもいいのですが、正直なところ、診断の結果そのものより、質問に答えながら「自分はどこで手が止まるか」を観察するほうに価値があると思っています。手が止まったところに、たいてい不安の元がありますから。

マサキ
マサキ
編集・分析担当
資格の受験条件・費用・試験情報を整理し、資格選びと学習計画の判断材料を提供しています。記事ごとに公式案内や参照資料を確認し、確認済みの範囲を本文に記載します。2026年9月から既存記事を順次点検しています。編集方法と情報の取り扱いは運営方針をご覧ください。