仕事柄、資格の合格体験談を毎日のように読んでいます。ブログ、SNS、掲示板。読みあさっているうちに、あることに気づきました。体験談のほとんどが、合格発表の日で終わっているんです。
「番号がありました。今までで一番うれしかった」。そこで記事が終わる。その続き――合格証が届いて、月曜日にいつも通り出社して、それからどうなったのか。そこまで書いている人は、びっくりするほど少ない。
続きを探して読んでみると
それでも探せば、続きを書いてくれている人はいます。そして正直に言うと、その一定数が「何も起きなかった」と書いています。
給料は変わらなかった。仕事内容も変わらなかった。会社の誰にも気づかれなかった、という人もいました。資格手当を申請して月数千円ついたのが唯一の変化だった、という話も。合格発表の日が感情のピークで、あとは静かなものです。
夢のない話をしたいわけではなくて、これはむしろ大事な前提だと思うので書いています。資格は、取っただけではたいてい何も起こしません。これを知らないまま受験すると、合格したあとに妙な脱力感に襲われることになります。せっかく受かったのに「あれ、こんなものか」ってなってしまう。
資格は自動ドアではなく、鍵に近い
何も起きないのは、資格が無力だからではありません。資格が自動ドアではなく鍵だから、です。持っているだけでは何も開かない。どの扉に差すかを決めて、自分で差しに行く必要があります。
扉というのは、具体的にはこういうものです。応募条件に「有資格者のみ」と書かれた求人。社内規定の資格手当の一覧表。有資格者を置かないと営業所や施設を開けない、というタイプの法律上の必置義務。独立開業の登録要件。どれも、資格がなければそもそも差し込むことすらできない扉です。
「変わった人」は、取る前から使い道を決めていた
逆に「資格で人生が変わった」側の体験談を並べてみると、共通点がわりとはっきりしています。みんな、合格する前から鍵の差し先を決めているんです。
転職サイトで「この資格が応募条件になっている求人」を先に検索して、ブックマークしてから勉強を始めた人。社内の資格手当一覧を眺めて、勉強時間あたりの手当額が一番割のいいものから取った人。開業の要件から逆算して取りに来た人。この人たちにとって合格はゴールではなくて、すでに走っているコースの通過点でした。
取ってから使い道を探す人と、使い道があって取りに行く人。同じ資格でも、その後はまったく別物になります。
それでも「無駄だった」と書く人は意外と少ない
面白いのは、「何も起きなかった」と書いた人たちの多くが、それでも後悔はしていないと続けていることです。何か月も毎日机に向かえたという事実が自信になった、勉強の習慣だけが残った、業界のニュースが急に読めるようになった。そういう、履歴書には書けない変化です。
ただ、それだけを目当てに何万円も払って受験するかというと、微妙なところですよね。だから、これから資格を選ぶ人にひとつだけおすすめしたいことがあります。
合格したあとの自分の平日を、一日ぶんだけ想像してみてください。その一日が今と何ひとつ変わらない想像しかできないなら、その資格はまだ鍵の差し先が決まっていません。求人を一件探してみるでも、社内の手当一覧を確認してみるでもいい。差し先を先に見つけてから勉強を始めても、ぜんぜん遅くないはずです。
何から考えればいいか分からないという人向けに、資格診断や資格の比較ツールも用意しています。鍵選びの参考になればうれしいです。