当サイトの資格ページには「勉強時間の目安:◯◯時間」という数字が載っています。その数字を整備している張本人として、今日は少し言いにくいことを書きます。
あの数字、そのまま信じないでください。
その数字、誰が測ったのか
世の中に出回っている「目安時間」の出どころは、突き詰めるとだいたい3つしかありません。
まず、資格予備校や通信講座の公式サイト。ここの数字は構造的に短めに出ます。「自社の講座なら効率よく学べる」という文脈で出てくる数字ですし、正直なところ、長い時間を書いたら受講をためらわれてしまう。嘘ではないけれど、いちばん条件がいいときの数字です。
次に、合格者アンケート。これは正確そうに見えて、実はかなり怪しい。自分の勉強時間をストップウォッチで計っていた人なんて、ほとんどいません。終わってから「だいたい1日2時間を半年だから……360時間くらい?」と逆算した、記憶ベースの自己申告です。しかも人間は、頑張った記憶は盛るし、サボった日々のことは忘れます。
最後に、個人の合格ブログ。いちばん生々しくて参考になる一方で、ここには強烈なバイアスがあります。ブログを書くのは受かった人だけ、ということです。同じ時間勉強して落ちた人は、ブログを書きません。
「3か月で受かった」と「2年かかった」は、両方本当
たとえば日商簿記検定の2級。「3か月で受かった」という体験談と「2年かかった」という体験談が、同じ検索結果に並んでいます。どちらかが嘘なのではなく、たぶん両方本当です。
経理部で3年働いている人にとっての簿記2級と、借方・貸方という言葉を初めて見る人にとっての簿記2級は、名前が同じだけの別の試験です。前提知識の差は、そのまま勉強時間の差になって現れます。それも2倍や3倍ではなく、ときに10倍の差になります。
つまり「目安◯◯時間」というひとつの数字は、前提のバラバラな無数の受験者をむりやり一個に潰した数字です。あなたがその平均にぴったり当てはまる可能性は、正直それほど高くありません。
それでも目安を載せている理由
じゃあ目安時間に意味がないかというと、そうは思っていません。あの数字のいちばんの使い道は、正確な予測ではなく「桁を知ること」です。
その資格は30時間級なのか、300時間級なのか、1,000時間級なのか。これが分かるだけで、計画はだいぶ立てやすくなります。30時間級なら来月の試験に間に合う。300時間級なら半年から1年の仕事。1,000時間級になると、生活そのものを作り替える覚悟の話になってくる。この桁の感覚だけは、どのソースの数字を使ってもそう大きくは外れません。
目安時間の、私のおすすめの使い方
もし当サイトの目安時間を計画に使うなら、こう使ってほしいです。
まず、目安に1.5を掛けて見積もる。前に書いたとおり、世に出回る数字は楽観寄りに偏っているので、1.5倍しておくとだいたい現実に近づきます。まったくの初学者なら2倍でもいいくらいです。
次に、総時間ではなく「1日に確実に出せる時間」のほうから逆算する。平日1時間・休日2時間なら週9時間、月にしておよそ40時間です。450時間の試験なら1年弱、という計算になります。ここで出てきた期間を見て「無理だ」と感じたら、それはあなたの能力の問題ではなく、いまの生活とその資格の相性の問題です。資格のほうを変えるという選択も、ぜんぜんありだと思います。
資格ごとの勉強時間は比較ページで横に並べて見られるようにしてあります。数字は道具です。振り回されずに、桁の把握と逆算にだけ使ってください。