「酸素欠乏危険作業者」が指すもの
この名称の免許や国家試験はありません。労働安全衛生規則第36条第26号は、労働安全衛生法施行令別表第六の酸素欠乏危険場所での作業に係る業務を、特別教育が必要な業務に挙げています。具体的な科目は酸素欠乏症等防止規則第12条が定め、事業者は労働者をこの業務に就かせる前に教育を行わなければなりません。この記事では、硫化水素を伴わない第一種酸素欠乏危険作業の特別教育を修了した人を酸素欠乏危険作業者と呼んでいます。
特別教育は修了試験を国が行う制度ではなく、合格率や全国共通の試験日もありません。自社で教育を行う事業者もあれば、外部の教育機関の講習に労働者を参加させる事業者もあります。
第一種と第二種の区分
酸素欠乏症等防止規則第2条は、空気中の酸素濃度が18パーセント未満の状態を酸素欠乏と定義しています。硫化水素については、濃度が100万分の10を超える状態を酸素欠乏等に含めます。
同条は、酸素欠乏危険場所での作業のうち、施行令別表第六第3号の3、第9号、第12号の場所での作業を第二種酸素欠乏危険作業とし、それ以外を第一種としています。第一種に当たる場所の例として、別表第六には次のような場所が挙がっています。
- ケーブルやガス管を収める暗きょ、マンホール、ピットの内部
- 相当期間密閉されていた鋼製のボイラー、タンク、船倉などの内部
- 穀物や飼料を貯蔵するサイロ、きのこ類の栽培に使うむろなどの内部
- しょうゆや酒類など発酵する物を入れたタンクや醸造槽の内部
- ドライアイスを使う冷蔵庫や冷凍コンテナー、不活性ガスを入れたタンクなどの内部
汚水やし尿、腐泥を入れたことのある槽やマンホールの内部は第9号に当たり、第二種の対象です。同じマンホールでも、何が滞留していたかで区分が変わります。
特別教育の科目と時間
酸素欠乏危険作業特別教育規程第1条は、第一種の特別教育を学科教育で行い、次の時間以上とするよう定めています。
| 科目 | 主な範囲 | 時間 |
|---|---|---|
| 酸素欠乏の発生の原因 | 発生の原因、発生しやすい場所 | 30分 |
| 酸素欠乏症の症状 | 酸素欠乏による危険性、主な症状 | 30分 |
| 空気呼吸器等の使用の方法 | 空気呼吸器・酸素呼吸器・送気マスク・換気装置の使用と保守点検 | 1時間 |
| 事故の場合の退避及び救急そ生の方法 | 墜落制止用器具や救出用器具の使用、人工呼吸、人工そ生器の使用 | 1時間 |
| その他必要な事項 | 関係法令と、当該業務で酸素欠乏症を防ぐために必要な事項 | 1時間 |
合計は4時間で、実技の時間は定められていません。東京労働局の特別教育一覧でも、第1種酸素欠乏危険作業に係る業務は学科4時間・実技0時間とされています。
現場の基準と事業者が残す記録
酸素欠乏症等防止規則第5条は、酸素欠乏危険作業を行う場所の酸素濃度を18パーセント以上に保つよう換気することを事業者に求めています。爆発や酸化を防ぐため換気できない場合などは例外です。教育で学ぶ空気呼吸器や救出用器具の扱いは、換気だけでは安全を確保しきれない場面に備える内容です。
事業者は労働安全衛生規則第38条により、特別教育の受講者や科目などの記録を作成して3年間保存します。国が修了者を登録する仕組みはないため、転職したときは前の勤務先や講習機関の修了証明が受講の手がかりになります。現場で作業を指揮する酸素欠乏危険作業主任者は技能講習の修了が必要で、この特別教育とは別の資格です。
受講前の確認
当サイトの提案:まず、担当する現場が別表第六のどの号に当たるかを勤務先に確認してください。汚水槽や下水のマンホール、海水が滞留した設備に入る可能性があるなら、第一種の4時間の教育では足りず、第二種の5.5時間の教育が必要になります。外部講習を選ぶときは、案内に「第一種」「第二種」のどちらと書かれているか、修了の書面に科目と時間が記載されるかを申込前に確かめておくと、配置の判断がしやすくなります。
参照資料と確認日
2026年10月4日確認。年度を記載した日程・手数料は、その年度の公式案内に基づきます。