法律上の位置づけ
食品衛生法第67条は、都道府県等が食中毒の発生を防ぎ、地域の食品衛生を高めるために、食品等事業者に助言や指導などの援助を行うよう努めると定めています。そのうえで同条は、事業者の自主的な衛生活動を進めるため、社会的信望があり食品衛生の向上に熱意と識見を持つ人の中から、食品衛生推進員を委嘱できると規定しています。
委嘱するかどうかは各自治体の判断です。中野区の説明によると、この制度は平成7年の食品衛生法改正で設けられました。東京都内では江東区、世田谷区、中野区などの特別区が推進員を置き、それぞれのページで活動を紹介しています。
どのような人が選ばれるか
推進員になるための試験や講習、受験資格は法律に定められていません。江東区は、区内の営業者や食品関係の仕事に携わる人の中から条件に合う人を選び、区長が委嘱するとしています。世田谷区は、令和7年1月に区内の食品等事業者や有識者など10名を委嘱したと公表しています。中野区の第15期推進員の一覧には、飲食店や食肉販売業などの業態が記載されています。
このように、推進員は地域で食品を扱ってきた人の経験を行政の施策に生かす仕組みです。一般の人が自分で申し込んで取得する種類の資格とは性格が違います。
推進員の主な活動
法律では、推進員は飲食店営業の施設の衛生管理などについて、都道府県等の施策に協力して事業者からの相談に応じ、助言などを行うとされています。区のページに書かれている具体的な活動は次のとおりです。
- 営業者などからの相談に応じ、助言をする(江東区、世田谷区)
- 保健所長が開く食品衛生推進会議に出席し、必要な提言をする(江東区)
- 保健所が行う食品衛生の普及啓発に協力する(江東区、世田谷区)
- 地域の食品衛生に関する情報を集める(江東区、世田谷区)
- 消費者・事業者・行政の意見交換の場に参加する(世田谷区、中野区)
江東区は令和8年度第1回の食品衛生推進会議を5月12日に開き、前年度の監視指導の結果や今年度の監視指導計画、食中毒の発生状況を議題にしました。
任期と自治体ごとの運用
任期は自治体が決めます。江東区と世田谷区は2年間としています。中野区の第15期推進員の委嘱期間は令和8年4月1日から令和10年3月31日までです。
運用の仕方も区によって違います。世田谷区は、毎年策定する食品衛生監視指導計画の中に推進員の設置を位置づけ、保健所が年2回、2月と8月に「食の安全安心だより」を推進員に配って意見を求めています。江東区は推進会議を公開で開き、区内在住・在勤の人が申込順で傍聴できるようにしています。
食品衛生監視員との違い
名前が似ている食品衛生監視員は、食品衛生法第30条に基づき、厚生労働大臣、内閣総理大臣、都道府県知事等がその職員の中から命じる行政の担当者です。監視員は自治体などの職員として監視指導を行います。推進員は民間の立場で事業者の自主的な取り組みを支える役割なので、選ばれ方も仕事の内容も異なります。
関心がある人へ
当サイトの提案:推進員の活動に関わりたい人は、まず事業所がある自治体の保健所の食品衛生担当のページで、推進員を置いているか、次の委嘱がいつかを確認してください。江東区のように区内の営業者などから選ぶ自治体では、自分の店の衛生管理をきちんと記録し、区が公表する食品衛生監視指導計画や推進会議の会議録に目を通しておくと、推進員がどんな課題に意見を求められているかが分かります。食品衛生監視員を目指す場合は、自治体の職員採用試験の案内を別に確認してください。
参照資料と確認日
2026年10月4日確認。年度を記載した日程・手数料は、その年度の公式案内に基づきます。