「試験日」より先に「申込締切」が来る、という当たり前の落とし穴

このサイトでは資格ごとの試験日程もデータとして載せていて、私は毎年、各実施団体の発表を追いかけてはカレンダーを更新する係をやっています。1,300を超える資格の日程を年がら年中めくっている生活なのですが、その中で気づいたことがひとつあります。みんな「試験日」はちゃんと見るのに、「申込締切」はあまり見ていないんですね。試験日は覚えているのに、その手前にある締切のほうは、なんとなく「そのうち」で済ませてしまう。

そして体験談を読んでいると、定期的に同じ報告が流れてきます。「勉強は順調だったのに、申し込みを忘れていた」。冗談みたいな話に聞こえますが、本当に、毎年どこかで誰かがこれをやってしまっています。実力で落ちたのではなく、願書で落ちる。今日はこの、当たり前すぎて誰も警戒しない落とし穴の話を書きます。正直、コラムのネタとしては地味です。でも被害の大きさでいえば、勉強法の失敗よりこっちのほうがずっと深刻だと思っています。

締切は試験日の2〜3か月前に来る

国家試験の多くは、試験日の2〜3か月前に申込が締め切られます。たとえば社会保険労務士の試験は毎年8月下旬にありますが、申込の受付はだいたい5月末で終わります。行政書士は11月の試験に対して、申込は夏の終わりまで。10月になって「そろそろ申し込むか」と思い立った人の前で、窓口はとっくに閉まっています。試験本番より3か月も前に、受験するかどうかの決断だけは先に求められるわけです。

日程のデータを並べて眺めていると、これは例外ではなく、ほぼ標準仕様だとわかります。試験の直前まで申し込める国家試験のほうがむしろ珍しいくらいです。会場の確保や受験票の発送を考えれば運営側の事情はよくわかるのですが、受験する側の体感とは確実にズレています。人間はどうしても、締切というものは本番の直前にあると思い込んでしまうので。

もうひとつ厄介なのは、その年の詳しい日程が載った受験案内自体、試験の数か月前にならないと公表されないことが多い点です。つまり「いつか取ろう」とぼんやり思っているだけの人は、申込期間が始まったことにも、終わったことにも気づけません。情報は向こうから歩いてきてくれないんですね。

勉強の計画は試験日から逆算して立てるのに、申込のことは誰も逆算しない。落とし穴はここに口を開けています。

年1回の試験で締切を逃すと何が起きるか

申込を逃したときのダメージは、試験の実施回数でまったく違います。年に何度も実施される検定なら「次の回でいいか」で済む話ですが、国家試験には年1回しかないものがたくさんあります。先ほどの社会保険労務士も行政書士もそうです。締切を1日過ぎたら、次のチャンスは1年後。1日と1年が等価交換になる瞬間です。

体験談を読む限り、この1年がいちばん削るのはお金でも時間でもなく、気力のようです。「来年受けよう」と切り替えたつもりでも、仕上がっていた知識は1年かけてゆっくり抜けていく。模試でいい判定が出ていた人ほど、その崩れていく感覚に耐えられなくて、そのまま受験自体をやめてしまう。そういう報告を私は何度も読みました。実力不足で落ちたのなら納得のしようもありますが、申込忘れには納得できる要素がひとつもないんですね。自分への腹の立ち方が、不合格のときとは種類が違うみたいです。

実害の面でも、1年のずれは小さくありません。資格を前提に転職活動を計画していた人はその計画ごと後ろにずれますし、職場の資格手当や昇進要件が絡んでいる人なら、もらえたはずのものが1年遅れます。「たかが手続き」の代償としては、ちょっと重すぎます。

なぜ「知っていたのに」忘れるのか

申込忘れの体験談をよく読むと、締切の存在を知らなかった人は案外少数派です。多いのは「知っていたのに、気づいたら過ぎていた」というパターン。これには構造的な理由があると思っています。申込期間って、勉強がいちばん中だるみする時期に来るんです。

試験の2〜3か月前といえば、追い込みを始めるにはまだ早く、初期のやる気はだいぶ薄れてきたころです。教材と向き合うだけで精一杯で、事務手続きにまで頭が回らない。しかも申込の受付期間そのものが2〜4週間程度しかない試験も多くて、「あとでやろう」を2回くらい繰り返すと、もう終わっています。

それから、試験団体は申込開始を個人にお知らせしてはくれません。受験者の多い有名な資格なら、申込開始日にSNSや受験生向けのメディアがざわつくので嫌でも気づきますが、マイナーな資格は自分から公式サイトを見に行かない限り、誰も何も教えてくれない。静かに始まって、静かに終わります。

だから対策は、意志ではなく仕組みに頼ったほうがいいです。「申込開始日に申し込む」と最初から決めてしまうのがいちばん確実だと思っています。締切の前ではなく、開始日に。先延ばしの余地そのものを消しておくわけです。

申込そのものが、ちょっとした作業である

もうひとつ見落とされがちなのは、申込が「ボタンを押すだけ」では終わらないことです。これも体験談を読んでいて、へえ、と思った部分でした。

ネット申込が主流になってきたとはいえ、顔写真の登録はほぼ必須で、サイズや背景の規格が合わずに撮り直しになった、という話はよく見かけます。試験によっては今でも紙の願書を取り寄せる必要があって、しかもその願書の「配布期間」が申込期間より先に終わることすらあります。受験資格に実務経験が要る試験なら、勤務先に証明書を書いてもらう工程が挟まって、上司の確認待ちで数日が溶けることも。受験手数料の払込方法が限られていて、平日に金融機関の窓口へ行く必要があるケースもまだ残っています。

つまり申込には準備のリードタイムがあって、締切当日に着手したのでは間に合わないことがあるんです。締切日は「その日までに思い立てばいい日」ではありません。さらに言うと、申込が遅いと希望の試験会場が埋まっていて、隣の県まで受けに行くはめになる試験もあります。早めに申し込んで損をすることは、まずありません。

「いつでも受けられる試験」にも別の罠がある

ここまで読んで、「自分が受けるのはCBT方式で年中受けられるから関係ない」と思った方もいるかもしれません。たしかに最近は、テストセンターで好きな日に受けられる試験が増えました。締切に怯える必要がないのは、純粋にうらやましい環境です。

ただ、体験談を読んでいると、こちらにはこちらの罠があります。「いつでも受けられる」は、かなりの確率で「いつまでも受けない」に化けるんです。締切という外部の強制力がないと、仕上がるまで待とう、もう少し固めてから、を繰り返して、気づけば半年勉強だけしている。締切に追われるのも苦しいですが、締切がないのも案外苦しい。この場合は、自分で受験日を先に予約してしまって、人工の締切を作るのが効きます。結局どちらのタイプでも、先に日付を確定させた人が強いんですね。

資格を決めたら、最初にやることはひとつ

というわけで、私からのすすめは単純です。受ける資格を決めたら、参考書を選ぶより先に、申込期間を調べてカレンダーに入れてください。試験日ではなく、申込開始日と締切日のほうをです。

締切の2週間くらい前にリマインダーをひとつ置いておくと、さらに安心です。写真の準備や願書の取り寄せが必要なら、その分も前倒しで。それから、日程は年度によって動きます。去年の日付の記憶を使い回さず、必ずその年の公式発表を確認してください。勉強計画はあとからいくらでも立て直せますが、申込だけはやり直しがききません。

まだ複数の資格で迷っている段階でも、候補それぞれの申込時期だけは先に控えておくことをすすめます。「迷っているうちに今年の分が締め切られていた」というのも定番の失敗で、決断の締切は試験の締切より前に来るからです。

数百時間の勉強が、たった1枚の願書で1年延期になる。データを扱っている身として、これがいちばん見ていてつらいパターンです。試験日をカレンダーに書き込むその同じ手で、2〜3か月手前にある締切日も書き込む。当たり前の話なんですが、当たり前すぎてみんなやらないので、ここに書いておくことにしました。

マサキ
マサキ
編集・分析担当
国家資格・民間資格あわせて1,300超の試験データを管理しながら、合格者ブログ・体験談・SNS投稿を日々読み込んでいます。公式統計だけでは見えない「実際の手応え」「つまずきポイント」を受験生視点で記事に落とし込むのが担当です。

一次情報は各試験実施機関の公式サイトと公的統計を基本とし、体験談ベースの記述は複数記事で裏付けが取れたものだけを採用。資格選びで遠回りや後悔をしない判断材料を提供することを目的にしています。
マサキ
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国家資格・民間資格あわせて1,300超の試験データを管理しながら、合格者ブログ・体験談・SNS投稿を日々読み込んでいます。公式統計だけでは見えない「実際の手応え」「つまずきポイント」を受験生視点で記事に落とし込むのが担当です。

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