合格発表のデータを整理していて、ときどき思い出すことがあります。資格試験の合格証には、点数が書いてありません。満点で受かった人も、合格点ちょうどで滑り込んだ人も、もらう紙は同じです。そして翌年になれば、どちらも同じ「有資格者」としてカウントされます。
当たり前の話に聞こえるかもしれません。でも体験談を毎日読んでいると、この当たり前を受け入れられないまま勉強を始めて、苦しくなっていく人が本当に多いんです。今日はその話を書きます。
多くの試験は、6〜7割で受かる
資格試験の合格基準は、試験ごとに公表されています。眺めていくと、だいたい満点の6〜7割前後に設定されているものが多い。行政書士のように基準点があらかじめ決まっている試験もあれば、宅建のように回ごとに合格点が動く試験もありますが、いずれにしても「満点」や「9割」を要求してくる試験は、ほとんどありません。
つまり試験を作る側は、最初から「3割くらいは落としていい」と言ってくれています。出題側が許してくれている失点を、受験者の側が自分に許せない。満点主義のしんどさは、ここから始まります。
完璧主義の人が挫折する場所は、だいたい同じ
挫折談を読み込んでいると、完璧主義タイプの人がつまずく場所はかなりはっきりしています。テキストの1周目です。
1章を完璧に理解してから2章へ進もうとする。分からない箇所があると先へ進めず、同じページを何日も往復する。そうこうしているうちに、序盤の章だけ異様に詳しくなって、テキストの後半は手つかずのまま試験日が来てしまう。「民法だけは得意でした」と書いてある不合格体験談を、私は何度も読みました。
厳しい言い方になってしまいますが、試験範囲の前半を100%理解して後半が0%の人は、全体を60%ずつ理解した人に負けます。試験は理解の深さではなく、合計点で決まるからです。
「捨て問」は手抜きではなく、戦略
もうひとつ、合格体験談のほうに共通して出てくるのが「捨てる」という言葉です。毎年ほんの数問しか出ない割に習得へ膨大な時間がかかる分野、正答率が極端に低い奇問。そういうものを、受かる人は最初から捨てています。
これを「手抜き」と感じてしまう人がいるのは分かります。お金を払って受ける試験ですし、せっかく勉強するなら全部理解したい気持ちも自然です。でも、合格基準が7割の試験で出題率の低い難所に時間を注ぐのは、戦略としてはかなり分の悪い賭けです。その時間を頻出分野の取りこぼし防止に回したほうが、合計点は確実に伸びます。
満点を取りに行く勉強と、合格点を取りに行く勉強は、同じ試験に対するまったく別の競技だと思ったほうがいい。そして資格試験で開催されているのは、後者だけです。
完璧に学びたいなら、合格後にいくらでもできる
誤解のないように書いておくと、深く完璧に学びたいという気持ち自体を否定したいわけではありません。順番の問題です。
資格の勉強は、合格した日に終わりではありません。実務で使う人は、合格後のほうがよほど深く学ぶことになります。趣味で学び続けるのも自由です。ただそれは、合格証を手にしてからゆっくりやればいい。試験日という締切がある期間に満点主義を持ち込むと、締切のほうが先に来てしまいます。
これから勉強を始める人は、テキストを開く前に、その試験の合格基準を一度確認してみてください。当サイトの各資格ページにも試験形式のデータを載せていますし、比較ページで並べて見ることもできます。「7割でいい」と最初に知っておくだけで、分からない1問の前で止まってしまう夜が、だいぶ減るはずです。3割は、堂々と間違えていい。それが試験のルールです。