「電気取扱者」が指すもの
労働安全衛生法第59条第3項は、危険または有害な業務に労働者を就かせるとき、事業者がその業務に関する特別の教育を行うよう義務づけています。労働安全衛生規則第36条第4号は、その対象として電気取扱業務を定めており、同規則第329条ではこの業務に就いている人を「電気取扱者」と呼んでいます。
この記事で扱うのは、この特別教育です。合否を決める試験や免許の交付はなく、事業者が教育を行います。旧記事にあった第三種電気主任技術者試験や電気工事施工管理技術検定の日程・科目は別の制度なので、それぞれの記事で確認してください。
対象となる業務と電圧の区分
第36条第4号は、電圧を次のように区分して対象業務を定めています。低圧は直流750ボルト以下・交流600ボルト以下、高圧は直流750ボルト・交流600ボルトを超え7,000ボルト以下、特別高圧は7,000ボルトを超える電圧です。
- 高圧・特別高圧の充電電路やその支持物の敷設、点検、修理、操作の業務
- 低圧の充電電路の敷設・修理の業務(対地電圧50ボルト以下のものなど感電の危害のおそれがないものを除く)
- 配電盤室・変電室など区画された場所にある低圧の電路のうち、充電部分が露出している開閉器の操作の業務
対地電圧が50ボルトを超える蓄電池を内蔵する自動車の整備は、現行規則では第36条第4号の2として別に定められ、特別教育規程第6条の2の教育(学科6時間・実技1時間以上)が対象です。
特別教育の科目と時間
安全衛生特別教育規程第5条(高圧・特別高圧)と第6条(低圧)は、学科と実技の最低時間を次のように定めています。
| 科目 | 高圧・特別高圧 | 低圧 |
|---|---|---|
| 電気に関する基礎知識 | 1.5時間 | 1時間 |
| 電気設備に関する基礎知識 | 2時間 | 2時間 |
| 安全作業用具に関する基礎知識 | 1.5時間 | 1時間 |
| 活線作業及び活線近接作業の方法 | 5時間 | 2時間 |
| 関係法令 | 1時間 | 1時間 |
| 学科合計 | 11時間 | 7時間 |
| 実技(活線作業・活線近接作業の方法) | 15時間(充電電路の操作のみなら1時間) | 7時間(開閉器の操作のみなら1時間) |
東京労働局の安全衛生教育の一覧にも同じ時間数が載っており、労働基準協会連合会などの教育機関が事業者に代わって講習を行っています。受講料や日程は実施機関ごとに異なります。
学科で扱う範囲
低圧の学科教育では、低圧の電気の危険性、短絡、漏電、接地、電気絶縁といった基礎知識、配電設備・変電設備・配線・電気使用設備の保守と点検、絶縁用保護具や絶縁用防具、検電器などの安全作業用具の管理、充電電路の防護や停電電路に対する措置、救急処置を含む活線作業・活線近接作業の方法、関係法令を学びます。高圧・特別高圧の教育では、これに接近限界距離や静電誘導、発電・送電・受電設備、活線作業用装置、短絡接地器具などの範囲が加わります。
電気自動車等の整備の教育(第6条の2)は、自動車の仕組みと種類、コンバータとインバータ、駆動用蓄電池と充電器、駆動用原動機と発電機など車両に特有の装置に重点を置き、学科は電気装置に関する基礎知識の2.5時間が最も長く、実技は整備作業の方法について1時間以上です。
教育の省略と記録
規則第37条により、科目の全部または一部について十分な知識と技能があると認められる労働者は、その科目の教育を省略できます。事業者は特別教育を行ったら、受講者や科目などの記録を作り、3年間保存しなければなりません(規則第38条)。
受講前に確認すること
当サイトの提案:最初に、担当する作業が高圧・特別高圧か低圧か、そして開閉器の操作だけなのか敷設や修理まで行うのかを上司や設備担当者に確認してください。区分によって実技の時間が1時間から15時間まで変わるため、外部講習を申し込む前にコースの区分と時間割が業務と合っているかを見比べます。電気自動車やハイブリッド車の整備を担当する場合は、第36条第4号の2の専用コースが用意されているかも確かめ、修了証の写しを勤務先の記録と一緒に保管しておくと、勤務先が変わったときにも受講歴を説明しやすくなります。
参照資料と確認日
2026年10月4日確認。年度を記載した日程・手数料は、その年度の公式案内に基づきます。