「簡単に取れる資格」と検索してしまう夜に

「簡単に取れる資格」。この検索ワードでこのサイトにたどり着く人が、昔からずっと一定数います。アクセスの傾向を眺めるのも私の仕事のうちなのですが、この言葉にはどこか夜の気配があるというか、勢いのまま打ち込まれた感じが透けて見える気がしています。

先に言っておくと、私はこの検索を笑う気はまったくありません。何かを変えたいけれど、大きなことを始める余力はない。それでも、何かひとつ手応えがほしい。あの検索ワードは、たぶんそういう夜に打たれています。今日はその検索の先にある話を、データを毎日見ている立場から正直に書いてみます。

その焦りは、たぶん間違っていない

仕事がうまくいっていないとき、職場で自分の代わりがいくらでもいる気がするとき、人は履歴書に書ける何かがほしくなります。筋トレや読書と違って、資格には合格発表という形のはっきりした結果が出ます。やったことが紙になって残る。何かを変えたい焦りの行き先として、資格はそんなに悪くない選択だと思っています。

問題は、その焦りのまま「簡単」という軸だけで選んでしまうと、取ったあとに何も起きにくい、ということです。

「簡単に取れる」は「誰でも取れる」とほぼ同義

身も蓋もない話をします。簡単に取れるということは、誰でも取れるということです。そして誰でも取れるものは、履歴書に書いても差がつきません。採用する側は応募書類を山ほど見てきていて、どの資格がどれくらいの手間で取れるのか、相場をだいたい知っています。

もっと言うと、「簡単な資格をいくつも並べる」方向に進んでしまう人がいて、私はこれがいちばんもったいないパターンだと思っています。取りやすい検定を3つ4つ集めても、集めること自体が目的になってしまって、どれもこれも仕事に差さらない。1,300超の資格データを眺めていると、資格は数を足すものではなく、用途に合わせて1本選ぶものだとつくづく思います。

狙い目は「簡単×法律が配置を求めている」

では簡単めの資格に意味がないかというと、そんなことはありません。難易度のわりに妙に強い一角が、ちゃんと存在します。法律が「この資格を持った人を現場に置きなさい」と決めている系統です。

たとえば危険物取扱者の乙種第4類。ガソリンスタンドのように引火性の液体を扱う施設では、資格を持つ人がいないと営業そのものが成り立ちません。登録販売者も同じで、ドラッグストアやコンビニで一般用医薬品を売る現場には、この資格を持つ人の存在が求められます。どちらも数か月の勉強で十分届くとよく言われる試験ですが、「いないと店が回らない」という法律上の根拠があるので、求人での扱われ方が具体的なんです。資格手当が付く職場も珍しくありません。

同じ「簡単め」でも、誰でも取れて誰からも求められていない資格と、誰でも取れるけれど現場に必ず1人は要る資格とでは、取ったあとに見える景色がまったく違います。難易度が低いことと、価値が低いことは、実はイコールではないんですね。

「簡単かどうか」より「どこに差すか」

なので、あの夜の検索ワードは、半分だけ書き換えることをすすめたいです。「簡単に取れる資格」ではなく、「自分の行きたい場所で必要とされている資格のうち、いちばん手前にあるもの」。前半の「行きたい場所」が決まると、簡単かどうかは選ぶ基準ではなく、単なる所要時間の話に変わります。

具体的なやり方としては、求人サイトで気になる仕事をいくつか眺めて、応募条件や歓迎条件の欄に出てくる資格名をメモする逆引きがいちばん確実です。そこに繰り返し出てくる名前が、その業界への「差し込み口」です。それが難関資格なら手前の級や関連資格から入ればいいし、簡単な部類なら、それはもう迷わず取ってしまえばいい。

夜の勢いは、朝まで持ち越していい

焦って何かを始めたくなる夜は、悪いものではないと思います。実際、体験談を読んでいると「勢いで申し込んだのがきっかけだった」という人は結構います。勢いそのものは大事にしていい。ただ、その勢いで「簡単」を買うのではなく、「使い道」をひとつ選ぶ。翌朝になって後悔しないのは、間違いなくそっちです。

行きたい場所がまだぼんやりしていて逆引きのしようがない、という段階なら、資格診断のような入口から自分の向きを探ってみるのもひとつの手です。検索窓に「簡単」と打ちかけたその手を、いったん止めて。どうせ取るなら、夜の自分ではなく、明日の昼の自分が使える資格にしましょう。

マサキ
マサキ
編集・分析担当
国家資格・民間資格あわせて1,300超の試験データを管理しながら、合格者ブログ・体験談・SNS投稿を日々読み込んでいます。公式統計だけでは見えない「実際の手応え」「つまずきポイント」を受験生視点で記事に落とし込むのが担当です。

一次情報は各試験実施機関の公式サイトと公的統計を基本とし、体験談ベースの記述は複数記事で裏付けが取れたものだけを採用。資格選びで遠回りや後悔をしない判断材料を提供することを目的にしています。
マサキ
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