履歴書の資格欄は「持ち物リスト」ではなく「物語」として読まれる

資格のデータを毎日更新している立場上、どんな言葉でこのサイトに人が来るのかも、よく眺めています。安定して多いのが「履歴書に書ける資格」という検索です。みんな、あの数行の欄に何を書くかで、けっこう悩んでいる。

それで、採用に関わる人の話を聞いたり、人事側が書いた記事を読みあさったりして分かったことがあります。資格欄は、こちらが思っているような「持ち物リスト」としては読まれていません。読まれているのは、物語のほうです。

採用側は、1個ずつではなく「並び」を読んでいる

履歴書を受け取る側は、資格をひとつずつ点数化して足し算しているわけではありません。資格欄の並びから、「この人は何に時間を使ってきて、これからどこへ向かおうとしている人なのか」という線を読み取ろうとします。

たとえば経理職への応募で、日商簿記検定とファイナンシャル・プランニング技能士が並んでいたら、お金まわりの専門性をこつこつ積み上げてきた人だな、という線が一本通って見えます。資格そのものの点数というより、方向がそろっていることが効いている。資格欄というのは、職務経歴書よりも先に目に入る、いちばん短い自己紹介文なんです。

関係ない資格の羅列は、物語を散らかす

そう考えると、持っている資格を全部書くのが得策ではない理由も見えてきます。せっかくお金と時間をかけて取ったのだから全部書きたい、という気持ちは痛いほど分かるのですが、応募職種と関係のない資格が並ぶほど、さっきの「線」はぼやけていきます。

方向のバラバラな資格が5つ6つ並んだ資格欄は、読む側からすると「で、結局この人はどこへ向かいたいんだろう」となってしまう。ひとつひとつは立派でも、並べ方次第で、興味が散らばっている人、長続きしない人という余計な印象すら生みかねません。もったいない話です。

嘘を書けという話では、もちろんありません。選ぶ、という話です。応募する職種に線がつながる資格を優先して、つながらないものは思い切って省く。書かなかった資格は消えるわけではなく、面接で話題になったときの引き出しとして取っておけばいいんです。

級が低い資格、書くかどうか問題

よく悩まれるのが、いわゆる「3級って書いていいんですか」問題です。私の見てきた範囲での答えは、職種との距離による、です。経理に応募するなら簿記3級は「この分野の入口にもう立っています」という意味を持つので、書く価値があります。逆に、応募職種とまったく関係のない分野の低い級は、貴重な数行を使ってまで載せるものではない、という判断になりやすい。

それから、上の級を目指している最中なら、「日商簿記検定2級 取得に向けて勉強中」のように書く手があります。これは結果ではなく現在進行形の物語なので、向かっている方向を伝える材料としてはむしろ強い。ただしこれを書くと面接でほぼ確実に聞かれますから、本当に勉強している場合に限ります。勉強中と書いてあるのに中身を答えられないのが、いちばん印象を悪くするパターンです。

定番の資格にも、ちょっとした作法がある

運転免許や英検のような定番にも、書き方の作法があります。基本は正式名称で書くこと。運転免許は「普通自動車第一種運転免許」、英検は「実用英語技能検定」が正式な名前です。宅建も、正しくは「宅地建物取引士」。普段の呼び名のまま書いても落ちるわけではありませんが、正式名称で揃った資格欄は、それだけで書類全体が締まって見えます。

取得年月も意外と見られています。資格欄は取得した順に書くのが基本なので、年月の並びそのものが「いつ、何を学んできたか」の年表になります。ここでも物語なんですね。事務職の定番である秘書技能検定のような資格も、取った時期と応募のタイミングがつながって見えると、ぐっと説得力が増します。

少数精鋭で、先に線を引いてから並べる

まとめると、私のおすすめはこうです。資格欄を埋める前に、まず応募する職種で自分が何をしたいのかを一行だけ書き出してみる。そして、その一行に線がつながる資格だけを残す。結果として2〜3個になっても、まったく問題ありません。方向のそろった3つは、バラバラの7つより強いです。それでも欄が寂しければ、いま勉強しているものを「勉強中」として1行足せばいい。

そして、もしこれから取る資格を選ぶ段階なのであれば、順番を逆にしてみてください。履歴書に書けそうな資格を探すのではなく、自分の向かいたい方向を先に決めて、その物語の次の1行になる資格を選ぶ。どの方向が自分に合うのか手がかりがほしいときは、資格診断を入口に使ってもらえたらと思います。資格欄は持ち物自慢の場所ではなく、あなたがどこへ向かう人なのかを伝える、数行の物語です。せっかくなら、読みたくなる物語にしましょう。

マサキ
マサキ
編集・分析担当
国家資格・民間資格あわせて1,300超の試験データを管理しながら、合格者ブログ・体験談・SNS投稿を日々読み込んでいます。公式統計だけでは見えない「実際の手応え」「つまずきポイント」を受験生視点で記事に落とし込むのが担当です。

一次情報は各試験実施機関の公式サイトと公的統計を基本とし、体験談ベースの記述は複数記事で裏付けが取れたものだけを採用。資格選びで遠回りや後悔をしない判断材料を提供することを目的にしています。
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